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読書日記 行動心理学の知見の宝庫 サイレント・ヴォイス 感想

サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

女刑事(警視庁捜査一課巡査部長 楯岡絵麻)が行動心理学を用いて容疑者の仕草や行動から嘘を見破りまくる話で、取調室での会話のやりとりを中心に据えた連作推理短編小説だ。

絵麻が扱う行動心理学が人間の生来的な脳の仕組みをベースに組み立てられているので彼女の取り調べ手法についてはそれなりの納得感を得ながら読み進めることができた。
人間の脳は大きく、感情を司る大脳辺縁系、思考を司る大脳新皮質、生命維持的な生理を司る脳幹という3つの部位に分かれ、これらの部位が相互に連携することで人間の行動が成立する。
絵麻の取り調べアプローチは最初、容疑者の味方に徹して共感を得ながら、相手の細かいリアクションを元に大脳辺縁系つまりは感情に基づいた身体の癖・反応をサンプリング(真実を喋っている、嘘をついている、警戒している 等)し、それらを十分に収集できところで一転、味方から敵に転換して怒涛の追い込みをかけるというものだ。

追い込み時、絵麻が小首をかしげながら言う「よろしくね 大脳辺縁系ちゃん」というセリフが何とも小気味良い。

また、本作では下記のような多くの心理学・行動心理学用語が散りばめられていて折りに触れて絵麻がわざわざ解説を差し込んでくれるのもお得感がある。

  • スティンザー効果
  • ミルグラム実験
  • フォアラー効果
  • ゲイン・ロス効果
  • コールドリーディング
  • ランチョンテクニック
  • ローボールテクニック

上記の用語に興味が湧いた人は、とりあえず本書を読んでみると良いかもしれない。