読書日記 2018年5月31日 隠し事 読了
羽田圭介の 隠し事 (河出文庫) を読み終わる。
主人公「鈴木」はひょんなことから同棲中の彼女の携帯電話を覗き見て、彼女が自分以外の異性と交わすメールを読んでしまう。
自然の流れ(?)で鈴木は彼女の浮気を疑い、以降ことあるごとにミッション・イン・ポッシブルさながらの緊迫感で彼女の携帯を盗み見ながら猜疑心の炎をメラメラと燃やしていく。
ムキになって携帯の中を見ようとする「鈴木」を情けないなーと思いながら読み進めていると、後半で、実は彼女の方も鈴木の携帯の自動転送設定を勝手に弄っていて、随分と前から鈴木宛のメールは全て監視していたという相当にエグい事実が明るみに出る。
作品のテーマとしては、漏れ続ける情報で把握できることなんて実際的には些末かつ無意味で、それを甚大なことと捉えてしまうのは肥大した被害者意識から視野狭窄になっているだけだよということを訴えたいんだろうけれど、正直、男女の異質な関係性を描いた話の部分のアクが強すぎて、読み終わった後に薄ら寒いものを感じるのを禁じ得なかった。
(この薄ら寒さは 黒冷水 (河出文庫) を読んだ時のものに似ている)
ただ「隠し事を隠す場所」を作るため、鈴木が記憶術(頭の中に神殿を建てて記憶したいものをイメージとしてその中に配置していく)を試みる部分は思わず「本気?!」と吹き出してまうくらい面白かった。
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