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トンマッコルへようこそ 感想

2005年に公開された韓国映画。韓国では800万人が観て、その年の観客動員第一位となっている。日本での公開は2006年。当時から優れた反戦映画として評判になっていたが、見る機会がなく忘れていたのを思い立ってDVDで鑑賞。期待に違わぬ名作だった。もし未だ御覧なっていないなら、是非一度見ることをお勧めしたい。

舞台は、朝鮮戦争で、米軍の本格的な参戦によって南側が反攻した直後の朝鮮半島の山奥。不時着した米軍パイロットと山中に退却してきた北朝鮮軍の3人、そして韓国軍の衛生兵と少尉が、戦争が起きていることも知らない人里離れた集落「トンマッコル」にやってくる。最初は、銃を突きつけあって対峙していた北朝鮮と韓国の兵士たちだが、村人の農作業を手伝い、村の生活を経験していくうちに次第にお互いの関係が変化していく。しかし、戦争は容赦なくこの村を巻き込むようになり、兵隊達は村を救うためにある行動を起こそうとする。

Web上には、この映画が反米・親北朝鮮の映画だという意見がある一方、北の体制批判を、それとなく刷り込もうとする映画だと批判する正反対な書き込みもあったりして、ある意味、朝鮮半島を巡る社会的な状況が複雑に錯綜していることを示している。確かに、連合軍側は無慈悲にトンマッコルが存在する山を爆撃しようとするし、終盤トンマッコルに侵入してくる米兵や韓国兵は凶暴に描かれており、少なくとも米国「軍」に対する反感の存在は感じられるかもしれない。しかし、不時着した米軍パイロットのスミスは、言葉が通じないにもかかわらず村に溶け込んでいくし、北の軍隊も、味方の負傷兵を、足手纏いになるという理由だけで殺そうとするのが当然になっているように描かれており、単純に反米とか親北とかいう捉え方は適切ではない。むしろ、米国軍への反感に見えるものは、軍隊や戦争一般への反感であって、どこかの国や体制への反感、批判というものでは無いのではないだろうか。

元々は、舞台劇だとのことだが、納屋が手榴弾で爆破され、入っていたトウモロコシがポップコーンとなって雪のように舞う場面や、クライマックスの爆撃の場面など舞台では十分表現できないのではと思わせるところも多く、ある程度、映画向けに改変されているのではないかと思われる。初演は2002年。作者は、映画の製作、脚本も手掛けたチャン・ジン。チャン・ジンは、「ハイヒールの男」をはじめ、多くの映画の脚本、監督、製作をしており、この「トンマッコルにようこそ」で大韓民国映画大賞の脚本脚色賞を取っている。

監督は、パク・クァンヒョン。CMの監督をしていて、本作が実質的な長編劇映画デビュー作のようだが、大韓民国映画大賞で監督賞を取ったにもかかわらず、本作以降、ほとんど作品が発表されていないのは何故だろうか。

トンマッコルへようこそ (角川文庫)

トンマッコルへようこそ (角川文庫)