未処分利益

日記 メモ 映画 小説 感想 読書 Android iOS

凶悪 ピエール瀧に注目してしまう 感想

コカイン摂取で逮捕されたピエール瀧の事を想いながらNetflixを巡っていたら、タイムリー(?)にもファーストビューでレコメンドされていた本作。すでにAppleMusic等の大手音楽配信サービスではピエール瀧関連の楽曲配信が停止されるという風潮の中、この折れない堂々たるスタンス、Netflixはやはり頭一つ抜きん出ているのではないだろうか・・・と、改めて再評価していたところAmazonPrimeでも普通に配信されていた。映画作品は携わるステークホルダーの数が膨大なので安易な自粛対応は取りづらいものなのだろう。

凶悪

凶悪

冒頭2分くらいで瀧が注射針をブスリと刺して覚醒剤をキメるシーンが飛び込んできたので、ちょっと感動。
薬物事件発覚後にこのシーンを見ると「やはり経験者はキメる所作が上手いなー」と感じざるを得ない。
(瀧の場合、実際は丸めた韓国紙幣でのコカインの鼻吸入だけど)

収監中の死刑囚・須藤(ピエール・瀧)より、自らが関わった殺人事件や未解決事件の真相についての告白を受けた雑誌記者の藤井(山田孝之)。事件の首謀者は「先生」と呼ばれる不動産ブローカーの木村(リリー・フランキー)という男で、彼は未だに捕まっていないのだという。須藤は藤井に「先生」の存在を記事にして世間に公表するよう依頼をする。半信半疑で調査を始めた藤井ではあったが、次第に明かされていく驚愕の真実に慄き、そして、やがてその漆黒の悪意にのめり込んでいく。

本作は実際に茨城県で発生した「上申書殺人事件」を題材にしたノンフィクションベストセラー小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-」を原作にした映画だ。

自分の利得や欲望のために、善悪の垣根を平気で飛び越えて他者の尊厳を踏みにじりその命を平然と奪える凶悪な人間が実在するということに今更ながら恐怖を感じる。

ただ、その凶悪さに畏怖の念を感じつつも同時に後半で雑誌記者・藤井の妻(池脇千鶴)が藤井に述べた通り「世の中、こんな事件があるんだ。こんな怖い人がいるんだ、こんな殺され方するんだ」という興味を抱いてしまう。

藤井は痴呆症気味の母の世話という現実から目を背け、とりつかれたかのように事件の闇にのめり込んでいたが「こんな凶悪な人間を社会に野放しにしていてはいけない!」という正義感は建前でその根底にはこの「興味」があったのだろう。

実際、須藤に死刑の執行を遅らせるために利用されていたことを藤井が知っても、それほどのショックは感じていなかった。ラストで須藤の本当の思惑である「死刑」を破棄にしようと画策する件で藤井が「お前は生きていちゃいけない!」と激昂するシーンはあったけれど、これは映画的なバランスを取るための演出なのではないかと感じた。

そんな事を考えていると、一番「凶悪」なのはこの作品を楽しんで観てしまっている視聴者なのかもしれないと思えてしまう。